「お弁当の日」に学ぶもの

 平成20年度から宇都宮市では教育委員会主導のもと,全小中学校で「お弁当の日」という食育活動が行われています。年に数回,普段の給食に替えてお弁当を持参するのです。お弁当は児童が保護者と協力して作ります。その目的として「食事について親子でともに考える機会とする」「子供達の食への関心を高める」「感謝の心を育む」「学習した食育を実際の生活につなげ,環境面や地産地消などへの関心を高める」といったことが挙げられています。

 このような活動は,現在宇都宮だけでなく全国に広まっています。事の始まりは一つの小学校からでした。平成13年,香川県にある滝宮小学校で,当時の学校長 竹下和男先生の発案で行われた「弁当の日」でした(宇都宮市では弁当を大切にする思いを込めて「お弁当」としています)。竹下先生の方針は授業での調理実習を経た5年生と6年生が対象で,お弁当は完全に自分で作るというものです。保護者はつい手を出したくなりますが,我慢をして見守るのみです。自分だけで作ることで感謝の気持ちに目覚め,自分の力で生きていくことを学ぶというねらいがあります。またそれは親にとっても「待つ」「見守る」「任せる」大事さを学ぶ機会になるといいます。

 香川でも宇都宮でも子ども達の「弁当の日」の感想には「好き嫌いが言えなくなった」「不満を言わずに食べたい」「ありがとうを言うようにする」といった家族への感謝の言葉が並びます。

 さて,この「弁当の日」が全国に広まった背景には,食の問題に真剣に取り組む西日本新聞社(福岡市)の存在があります。その報道や出版物を見ると,食育の問題が,さらに食材,健康,精神,環境などの問題とも密接であることがわかります。その書籍の一つで助産師の内田美智子さんによる「ここ-食卓から始まる生教育」からほんの一部を抜粋してご紹介します。

「これまで,二千五百人もの赤ちゃんを取り上げてきました。母親は赤ちゃんの顔をじっと見つめ,涙を流します。しかしあたたかい涙や感動的なエピソードだけがあふれているわけではありません。冷たい,悲しい涙もあります。産婦人科には中高生もやってきます。そんな中高生の多くはすでに性のトラブルを抱えています。こんな思春期の子ども達と十年以上関わり『食』にたどり着きました。子ども達の『性』と『生』と『食』のつながりが見え始めました。生きることは食べること,食べることは生きることです。」

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