「五臓六腑」のお話

内景図

 「五臓六腑にしみわたる」という表現がありますが,この五臓とはどの臓器を指しているでしょうか?・・・こんな問題がクイズ番組で出題されていました。答えは肝・心・脾・肺・腎の各臓です。それでは六腑はどうでしょう。胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦の六つの腑が六腑となります。三焦(さんしょう)は中国医学に独特な臓腑であり,西洋医学のどの臓腑に相当するかについては定説がありません。漢方の源流,古代中国の医療のなかで想定されたものと言えます。想定されたというと非科学的で信用できないと思われるかもしれませんが,医療に於いて大切なことは治療効果を出すことですから,その想定にもとづいて鍼灸や薬草が用いられ,再現性のある治療効果がもたらされるとすれば大変重要な意味を持つのです。

 五臓六腑という表現は二千年も前の文献にすでに登場します。三焦以外の臓腑の名は西洋医学でも使用されることとなりますが,それぞれの臓腑がどのような働きをするのかということについては,東西両医学の間で必ずしも一致していません。しかし一致させることに意味はありません。漢方薬は漢方の概念で使用してこそ,効果が発揮されるためです。

 漢方では,臓腑個々の働きに加え,その関連性も重視され,やはり独特な考え方があります。その基本の一つに,詳細な自然観察をもとに築かれた五行説という概念があります。万物は木・火・土・金・水の五元素から成るという考え方です。

 木は伸びやかさ,春の象徴であり,神経や筋肉の働きをつかさどる肝は木の要素に属します。木が燃えると火が生まれます。火は活動,燃焼,夏の象徴です。絶えず血液を全身に送り,緊張時にはその働きを盛んにする心は火に属します。木から火が生まれるように,肝と心は母子関係にあると言えます。燃えた後には土が残り,土は万物の母であり,季節の変わり目(土用)の象徴とされます。食物から栄養素を吸収する臓器とされる脾は土に属します。土中から生じる金(金属)は物の変革・精錬を意味し,秋の象徴とされます。清い空気と濁気の交換をする肺が金に属します。鉱山から生じる水脈は,物を滋潤し,木を成長させます。水分代謝をつかさどり,また成長のエネルギーたる精(せい)を貯蔵する腎は水に属します。

 六腑は五臓に協力して生理活動を支えます。腑とは中空の器官で,実質的な臓とは形体を異にします。さらに,脳や髄,骨,脈管,子宮などは臓とも腑とも異なる特別な内臓とされます。

図:『類経図翼』内景図
明・張景岳(1563-1640年)著

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