「元気で長生き」を目指す

 「初老」を辞書で調べると「中年を過ぎて老年に入りかけた年頃」という意味に続いて「もとは40歳の異称」と書かれています。ところが2年前にNHK放送文化研究所が行った意識調査では「初老とは何歳?」との問いに42%の人が60歳くらいと回答しているそうです。生活環境や医療技術,美容技術などが発達した現代では当然の意識といえるでしょう。

 今年6月,厚生労働省が「健康寿命」を発表しました。健康寿命とは介護を受けたり病気で寝たきりになったりせず,自律して健康に生活できる期間とされ,2010年の値として男性70.42歳,女性は73.62歳となっています。同年の平均寿命は男性79.64歳,女性86.39歳です。健康寿命と平均寿命の差は約10歳ほど。健康寿命が延びてこの差が小さくなれば,健康で長生きする方が増えるということになります。それを実現するために重要とされているのが生活習慣病の改善や喫煙率の低減です。

 中国の医学古典で約2000年前に書かれた『黄帝内経(こうていだいけい)』では,天から与えられた人間の寿命は100歳と書かれています。『黄帝内経』の一部である「霊枢(れいすう)・天年篇(てんねんへん)」には,一生の間の身体の変化が10年ごとに記述されています。10歳・20歳は血気盛んな様子が書かれ,30歳では体格がしっかりと安定します。そして40歳になると「五臓六腑が完成する。ついで段々と皮膚のきめが粗くなり,顔色もつやを失いはじめ,髪もやや白くなる。肉体・精神は安定し,物事に動じなくなり,静かに座っていることを好む。」大きな衰えはありませんが,初老の兆しも見え始めます。その後徐々に内臓が衰えてゆき,目がかすむ,皮膚が乾燥するなどの変化を経て,いよいよ100歳で肉体と精神が離ればなれになると記されています。

 2000年前に天寿を全うするのは双塔に難しいことであったと想像できます。生活環境が比較にならないほど進展した現代では,元気に100歳を越えられるお年寄りも増えています。しかし豊かになりすぎて,栄養過多や運動不足が生じ,それらによって生じる生活習慣病の罹患者が増えれば,健康寿命はかえって短くなる恐れもあります。

 できるだけ体を動かす,早寝早起きを心がける,よく噛んで腹八分目に食べるなど,素朴な昔の生活に学ぶべきことも少なくありません。

戻る