きもだめしのきも

 夏の風物詩の一つに「きもだめし」がありますね。暗闇に現れる恐怖の気配に肝を潰したり、胆を冷やしたり・・・。
 漢字では「肝試し」「胆試し」と書きますが、肝や胆を試すとはどういうことでしょうか。国語辞書で「きも」を調べてみますと『1 内臓の主要部分。特に、肝臓』『2 内臓の総称。五臓六腑 』『3 胆力。気力。精神力』『4 物事の重要な点。急所』『5 思慮。くふう』とあります。この内、4番以外の項目は中国医学との関連性がうかがえます。

 中国医学では古来内臓を五臓六腑と表現し、肝は五臓(肝・心・脾・肺・腎)の一つであり、胆は六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)の一つです。肝と胆は位置的にも機能的にも密接な関係にあり、このことを表裏関係にあると表現します。

 肝の大事な働きとして、体内の様々な機能の連携をコントロールする役目があります。物事が順調に運ぶよう画策する思慮深い将軍にたとえられることもあります。そして肝と関連の強い胆は、決断をつかさどる役所です。肝や胆がしっかりしていると、突然の驚きや恐怖にも動じず、体の機能を維持することができるとされています。とくに胆の弱い人は、驚き易く、怯えがちで、睡眠の問題や不安感を生じやすくなります。現代でも物事に動じない精神力を胆力(たんりょく)といいますね。きもだめしはまさに肝・胆の力量を試す遊びだということ、皆さん腑に落ちましたか?

 ところで動物の胆(胆のう)は薬とされます。牛、豚、鯉、マムシ、熊などのものが利用されます。熊の胆のうは昔から「くまのい」と呼ばれ、高価な値段で取り引きされます。胆のうには胆汁が含まれ、胆汁は脂質の消化に働きます。胆のう由来の生薬は胃腸薬や解毒薬、強壮薬などとして用いられます。

 西洋医学では胆汁中のウルソデオキシコール酸を、肝疾患や胆石の治療、消化の促進などの目的で利用します。胆汁が鬱滞すると胆石の原因になりますが、ウルソデオキシコール酸は、胆汁の流れを改善し、胆石を溶かします。

 牛の場合は、胆のうだけでなく、胆石までも薬用利用されます。牛の胆石は牛黄(ごおう)と呼ばれ、解熱剤として少量を用いるほか、急性熱病や脳血管障害による高熱や意識障害に対する処方に配合されます。熱中症の対策にも応用できます。