アンチエイジングと漢方

 「アンチエイジング」という言葉をよく耳にします。直訳すれば「抗加齢」「抗老化」ということですが,もちろん加齢を止めることはできません。加齢も老化も自然な変化ですから,抵抗するわけにはいかないのですが,若々しく老いることができるのであれば,そうありたいものです。

 50歳前後を過ぎると目,耳,骨,脳,血流,尿,髪,皮膚などの問題が生じやすくなります。また胃腸や呼吸器の衰えも時に深刻な状態を引き起こします。漢方ではこうした問題の根源に根本的な生命エネルギーである「精(せい)」の減少があると考えます。精の減少がすなわち老化の原因なのですが,やはりこれは自然な変化です。しかしその減り方に個人差があり,減り方が早ければ実年齢よりも早く老けるということになります。また衰えに加えて,血行の悪さや老廃物の蓄積,ストレスの影響,冷えなどがあると,様々な症状につながります。そこで加齢に伴う諸症状の治療には,精を補うとされる生薬と,個々人の状態を考慮した生薬を組み合わせた処方を用いることが基本となります。

 最近,加齢を象徴するシミやしわ,頻尿,物忘れなどは血流が大きく関わっていることが指摘されています。とくに毛細血管と呼ばれる細い血管の影響が注目されています。毛細血管の直径は5~10μmで,これは髪の毛の10分の1です。動脈と静脈の間にあり,体中に張り巡らされた毛細血管は,血管総延長の99%を占めます。体のすみずみまで酸素や栄養を届けたり,老廃物を回収するのも毛細血管で行われているのです。

 ところが,血液の質が糖分や脂分の過多で悪化したり,冷えやストレスで血流が抑制されると,毛細血管中の血流も悪くなり,毛細血管が退化してしまう現象が観察されています。退化した毛細血管を復活させるには血流改善が必要です。

 運動では,第2の心臓といわれるふくらはぎを鍛えるかかとの上げ下げや,スキップ,縄跳びなどが推奨されます。また,食事のバランスや睡眠などの生活リズムも大切です。

 漢方で精を補う処方として有名な八味地黄丸は約二千年前の処方ですが,不思議なことに血流を改善する生薬を含んでいます。現代は食生活の乱れやストレスなどにより血液の汚れや血管の損傷が一層深刻です。若々しく老いるために,漢方でもさらに血流改善に役立つ生薬が活躍する時代です。