インフルエンザの漢方治療事情

 現在インフルエンザの治療は抗インフルエンザウイルス薬の使用が基本となっています。日本はこの種の薬品を過剰に使用しているという批判もありますが,とくに脅威が不確かな新型インフルエンザでは仕方がないことかもしれません。そんな中,漢方薬の麻黄湯(まおうとう)がインフルエンザに有効であると注目されています。実際に麻黄湯製剤を製造する漢方薬メーカーでは品薄の状況です。ところが漢方薬への信頼が高まる一方で,乱用による被害も耳にします。漢方本来の使用法を守ることが重要です

漢方薬の使い分け

 9月27日に宇都宮で漢方の学会が開かれました。横浜の医師 森由雄先生は「インフルエンザの漢方治療」と題した講演の中で,病状や治療過程に合わせた8種類の処方を例示されました。麻黄湯もその中の1処方ですが,発熱の程度,発汗の様子,体力の具合などによる使い分けが必要とのことでした。

 麻黄湯は発汗や気管支拡張などの作用を有する麻黄を中心とした4つの生薬からなります。有名な葛根湯(かっこんとう)もこの麻黄を含む7つの生薬で構成されます。どちらもゾクゾクと寒気が強い感冒の初期,比較的体力の充実した人に用いられます。麻黄湯はさらに節々の痛みなどを使用目標とします。葛根湯では首や肩のこわばりなどが特徴になります。
画像の説明  
マオウ科シナマオウ
中国北部やモンゴルに自生する。茎を乾燥したものが生薬の麻黄

 寒気がなく,熱感や口渇が強い場合は鉱物生薬の石膏(せっこう)が加わったものを選択します。またウシ科のサイガカモシカという動物の角は解熱・鎮痙に優れ,羚羊角(れいようかく)という生薬名で利用されます。羚羊角を含む銀翹解毒散(ぎんぎょうげどくさん)は発熱性疾患に用いられる名方です。

 こうした使い分けが適切であれば,著効も期待できるはずです。

予防的利用

 もう一つ注目度が高まっている漢方薬に補中益気湯(ほちゅうえっきとう)があります。この処方は古来,体質が虚弱でカゼをひきやすい人に多用されており,インフルエンザに対しても予防効果が高いと考えられます。ただし,補中益気湯にこだわるのではなく,自身の体調に合わせて体力をつける漢方薬を選択することが,本当の免疫力向上につながります。

 インフルエンザは時に恐ろしい経過をたどることがあります。漢方薬は比較的入手しやすいものですが,勝手な判断をせず,まずは医師の診断・治療をきちんと受けましょう。

※実際に漢方薬を服用する場合は,専門家とよくご相談下さい。

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