バラの効能

 美しい花の代表格と言えるバラには,野生種,栽培品種を含め,数え切れないほどの種類があります。それぞれ見頃は異なりますが,5月下旬から6月上旬は最盛期を迎える品種が多く,各地のバラ園が賑わいます。

 一般にバラとは,植物分類上,バラ科バラ属に属する植物の総称です。種類によって花の色や,形,大きさなどが異なり,また樹形も様々です。とくに香りの強い種類は洋の東西を問わず,人々に愛され,香料・嗜好品から医薬品にまで利用されています。

 森繁久彌さん作詞作曲の名歌『知床旅情』にも登場するハマナスは主に浜辺の砂地に自生する野生のバラの一種です。中国では玫瑰花(メイグェイファ・まいかいか)の名でお茶として飲まれる他,気の流れや血の流れを改善する生薬として,ストレスによる腹痛や下痢、月経痛などに用いられます。さらにその実はハーブのローズヒップの原料となります。

 ノイバラも日本に自生する野生のバラです。栽培品種に比べると地味ではありますが,万葉集に登場するなど,昔から日本人との関わりがあった植物です。ノイバラの実は営実(えいじつ)という生薬になります。営実は中国最古の薬物書にも記載され,また日本でも正式に医薬品として認められている生薬なのですが,現在日本でも中国でもあまり使われていません。営実には便秘を改善する瀉下(しゃげ)作用があり,その効力はかなり強いとされています。ですから安易に用いるべきではありません。また,ニキビや腫れ物に煎じ液を塗る方法も知られ,化粧水の原料になることもあるようです。

 中国原産で江戸時代に難波商人が日本に持ち込んだといわれているバラがあります。ナニワイバラと称し,西日本では野生化しているそうです。一見ノイバラに似ていますが,花の直径はノイバラの倍以上あって7~8cmになり,良い香りを放ちます。ナニワイバラの実は中国で金桜子(ジンインズ・きんおうし)という生薬になります。金桜子の薬効は営実とは反対で下痢止めです。

 5月下旬,真岡市の井頭公園内にあるバラ園を訪れました。華やかな色とりどりのバラを楽しむ人たちでとても賑わっていました。バラ園を出て,人影少ない山林の一角に開花するノイバラを見つけました。日本を代表する野バラですが華やかな舞台には似合わないようです。
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ノイバラ