マメ科植物由来の生薬

 節分の豆まきに使われる大豆は畑の牛肉と言われるほどに栄養価が高く、また醤油・味噌・納豆・豆腐等々の原料でもあり、私達にとって欠くことのできないものです。さらに家中の鬼を追いはらって福を招くのですから、この上ない有益な素材です。

 しかし漢方の世界では大豆はあまり用いられず、ときに黒大豆を発酵させて作る調味料の豆豉(とうち)が生薬として使用されることがあります。熱があるときに生じる煩燥感(胸苦しさ)を取り除くとされ、熱性の感冒に汎用される銀翹解毒散(ぎんぎょうげどくさん)などに含まれます。

 大豆同様に私達に身近な小豆には利尿作用があり、むくみを改善する生薬「赤小豆(せきしょうず)」として漢方書に登場します。しかしこちらも使用頻度は高いとはいえません。

 もやしや春雨の原料として有名な緑豆は夏の蒸し暑さから身を守る解暑薬として知られ、中国の家庭では夏の健康食として定番の素材です。

 熱帯地方原産のフジマメの実は、食用にもなりますが、漢方では「扁豆(へんず)」という生薬名で、胃腸を整えることを目的として使用されます。

 健康茶として知られるハブ茶は元来ハブソウの種子を炒ったものが使われていましたが、現在は近縁のエビスグサの種子を使うのが一般的です。エビスグサの種子は「決明子(けつめいし)」という生薬名があり、目の炎症や、高血圧、便秘などの治療に用いられます。

 以上は、マメ科植物の種子、いわゆる「豆」の利用について述べましたが、マメ科由来の生薬には種子ではなく、根を用いるものがいくつかあります。

 身近なところではクズの根を乾燥させた「葛根(かっこん)」があります。肩や背のこわばりをとる処方に用いられます。代表処方は有名な葛根湯です。

 また「甘草(かんぞう)」も漢方で最も重要なマメ科生薬の一つです。7割の漢方処方に含まれると言われるほど使用頻度が高く、甘味料やハーブティーの素材にも用いられます。

 最後にキバナオウギの根である「黄耆(おうぎ)」をご紹介します。黄耆は免疫力を高めることに優れ、代表処方には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や玉屏風散(ぎょくへいふうさん)、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)などがあります。寒い季節、カゼをひきやすい方にはぜひご利用いただきたい生薬です。
クズ
写真:クズの花