ミミズの薬用利用

 俳句をなさる方はご存じかも知れません。秋の季語に「蚯蚓鳴く(ミミズなく)」という言葉があるそうです。小林一茶は次のように詠んでいます。
「里の子や蚯蚓(ミミズ)の唄に笛を吹く」
何ともほほえましい情景が目に浮かびます。

 ところで,ミミズは非常に身近な生物ですね。見つけることも容易です。私の話ですから薬のことになってしまうのですが,民間薬としても有名です。小さい頃におばあちゃんが飲んでいたとか,熱が出たときに飲まされたといった逸話を薬局で語ってくれるお客様も意外といらっしゃるんです。

 日本でもミミズは正式に医薬品として流通しています。解熱薬として錠剤あるいは顆粒にされたミミズが販売されています。ただミミズという名前ではなく,『地竜(じりゅう)』という強そうな名前がつけられています。

 漢方処方にもミミズを含む物があります。『補陽還五湯(ほようかんごとう)』という処方です。中国の清の時代,王清任(おうせいにん)という名医によって考え出されました。体力や免疫力を賦活するオウギ,血行改善のトウキ・センキュウ・シャクヤク・トウニン・コウカ,そして地竜を加えます。地竜以外はすべて植物性で,非常に汎用される生薬です。体力をつけながら血流を改善していく処方で,元来梗塞の後遺症がある方などに使用されてきました。現在では顆粒状に製剤された物がありますので,ミミズの姿を見ることなく簡単に服用でき,筋力の低下やしびれ,頻尿など,応用範囲が広がっています。

 生薬の教科書を見てみますと,ミミズには解熱作用の他に鎮痙・気管支拡張・降圧などの作用があるとされており,前出の処方に含まれることも納得できます。

 ただ納得できないことが一つ。ミミズは鳴くのでしょうか?インターネットで調べてみるとミミズは鳴かないとのこと。昔の人が,オケラ(螻蛄)が「ジー」と鳴くのをミミズの鳴き声と勘違いしたものとありました。

 今までオケラを目にした経験はほんの数回ですが,中国の漢方書には意外と出てきます。利尿作用があってむくみに効くとのことです。

 ミミズなどは土壌中に有害な金属等が含まれていると体内で濃縮してしまう危険性があるそうですので,これらを無闇に利用するのはお控え下さい。