モクレン属の薬用植物

 私の通った東京薬科大学は東京都八王子市の郊外にあり,小高い山林を削って造られました。そのため自然が豊かで,学内の薬用植物園は山林の地形が活かされた状態になっています。学内には二つの食堂があり,その一つに「マグノリア」という名前が付けられています。

 マグノリアは植物のモクレン科(Magnoliaceae)モクレン属(Magnolia)を意味する言葉で,モクレン,コブシ,タムシバ,ホオノキなどの樹種がモクレン属に含まれます。いずれも花の形が美しく印象的です。

 キャンパスの入り口付近には,モクレンやハクモクレンが植えられており,春にその花々を楽しむことができます。また薬用植物園と称する山林の奥地へ行くとホオノキの高木あり,こちらは5月から6月にかけて直径15センチほどの白い大きな花を咲かせます。

 モクレン属に属する植物のいくつかは薬用植物としても重要です。コブシやタムシバの花雷は鼻づまりの治療に使用します。一般的に辛夷と書いてコブシと読みますが,生薬の世界ではコブシの花蕾もタムシバの花蕾も辛夷(しんい)と表します。代表処方には葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)や辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)などがあります。

 ホオノキは樹皮が薬用となります。生薬名を厚朴(こうぼく)といい,比較的使用頻度が高い生薬です。漢方でいう気の流れを改善する目的で使用されます。具体的には,咽喉がつかえる感じを軽減させたり,咳や喘息を改善させる働きがあり,代表的な処方として半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう),柴朴湯(さいぼくとう)などが挙げられます。また腹部の膨満感や便秘・下痢などにも用いられ,消化不良などに使用する平胃散(へいいさん),下剤の大承気湯(だいじょうきとう)や麻子仁丸(ましにんがん)などに含まれます。

 ホオノキというと大きな葉も特徴的です。大きい物では長さ40センチ,幅20センチにも達します。葉は漢方では利用しませんが,抗菌作用を有することが知られています。岐阜県の飛騨地方周辺では,朴葉寿司や朴葉味噌などの郷土料理でホオノキの葉を食器のように利用します。
ホオノキ
ホオノキの葉を見上げる(真岡市井頭公園にて)

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