ヨモギ属植物の薬用利用

 秋に花を咲かせるヨモギは、私達にとって大変身近な植物です。とくに春の新芽は独特の香りがあり、草餅をはじめ、おひたしや天ぷらなどにして楽しむことができます。またお灸に使うもぐさ(艾)は、ヨモギの葉の裏に生える綿毛を採集したものです。

 漢方でもしばしば利用されます。葉を夏に採集し乾燥させたものは艾葉(がいよう)と呼ばれる生薬になります。止血作用を有するとして痔の出血や女性の月経過多、不正出血などに用いられます。また体を温めることにも優れ、入浴剤などにも活用されます。

 ヨモギは植物の分類では、キク科ヨモギ属の代表種ということになります。ヨモギ属には30種以上の植物が含まれるとのことですが、ヨモギの他に薬用植物として有名なものにカワラヨモギがあります。

 カワラヨモギは川岸や海岸の砂地に生育します。やはり秋に花をつけるのですが、その花蕾が茵陳蒿(いんちんこう)という生薬になります。茵陳蒿も特有のさわやかな芳香があり、黄疸やじんましんの治療に用いられます。艾葉とは異なって体を温める作用はなく、むしろ炎症の熱をとる性質があります。中国では花蕾ではなく春の若い葉を薬用にします。若い葉は地べたに張り付くように広がり、全体に白い綿毛をかぶっています。そのため、綿茵陳(めんいんちん)と呼んで区別します。

 もう一つヨモギ属の薬草、クソニンジンを紹介します。何とも残念な名前がつけられています。葉の形状がニンジンの葉に似ていて、もむと強いにおいがすることからこのような名前がつけられたとのことです。クソニンジンも秋に花を咲かせます。中国では解熱薬の一つとして全草が使われています。1970年代にクソニンジンから抽出されたアルテミシニンは、後にマラリア治療薬の開発につながり、多くの命を救うことになります。この研究の中心であった屠呦呦(と・ようよう)さんが2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞されたのは記憶に新しいところです。

 以上のように私達の食文化や医薬の分野で重要なヨモギ属植物ですが、残念なことに昨今増加している秋の花粉症の原因の一つともなっています。とくに代表種のヨモギは繁殖力が強く、日本全国に分布しますので、厄介者扱いされることもあるようです。

写真:東京都薬用植物園で栽培されるクソニンジン
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