リンドウ…良薬は口に苦し

 秋を彩る花の一つにリンドウがあります。リンドウはリンドウ科リンドウ属の代表植物ですが,近縁のエゾリンドウや,それらを品種改良した園芸種のリンドウ属植物を総称してリンドウと呼ぶことも一般的です。青い鐘状の花を上向きにいくつも咲かせる姿は大変趣があります。

 リンドウは漢字では「竜胆」と書かれます。これは本来中国に自生するトウリンドウの中国名です。リンドウの仲間は根に苦い成分があり,昔から薬として利用されてきました。その苦味は大変強く,竜の胆に匹敵するほどだろうということで竜胆と名付けたと言われています。

 ちなみに牛や熊の胆のうは薬として珍重されます。豚の胆のうも胃薬の原料となります。いずれも苦味が強く,決して飲みやすいものではありません。竜胆の苦味はそれらをも上回ると考えられたのでしょう。

 さて,植物名としては「竜胆」と書いてリンドウと読みますが,漢方薬の世界では「リュウタン」と読みます。炎症を抑える働きが強く,利胆作用や,少量では胃酸分泌作用もあるとされます。竜胆を含む処方には,膀胱炎やおりものの異常などに使われる竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)や,関節の痛みに用いられる疎経活血湯(そけいかっけつとう)などがあります。

 また同じリンドウ属でヨーロッパに自生するゲンチアナ・ルテアの根は生薬「ゲンチアナ」となります。同様に強い苦味成分があり健胃薬として用いられます。

 それから民間薬として有名なセンブリは,リンドウ科センブリ属の植物です。センブリは当薬(とうやく)とも呼ばれ,胃炎などに用いられます。センブリの服用方法の一つに振り出しという方法があります。センブリ1本を小さく折って湯飲みなどに入れ,熱湯を注ぎ,自然に冷めてから服用します。千回振り出してもまだ苦いことからセンブリという名がついたと言われています。またセンブリの煮汁を外用すると脱毛に効果があるとされ,育毛剤に含まれることがあります。

 竜胆,ゲンチアナ,センブリは使用方法は異なるものの,化学的に苦味成分は大変類似しています。「良薬は口に苦し」という言葉を思い出さずにはいられない薬草たちです。

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