不妊症について(周期療法)

1.漢方薬でできること

 不妊症での漢方治療の目標は,
 (1)ホルモンのバランスを整える。
 (2)月経の周期を整える。
 (3)排卵のタイミングを整える。
 (4)子宮内の環境を整える。
ということを通して,妊娠しやすい体づくりを目差します。
つまり女性の月経をより自然な形にして,本来備わっている「妊娠する力」「産む力」を引き出すのです。

とはいっても,人工的にホルモンを補充したり,排卵を促したり,受精させるのではありません。

漢方では,
 ●冷えやのぼせ,月経痛,舌色などから,血流の状態を観察したり,
 ●体格や体質の強弱から,生命力を推測したり,
 ●ストレスや睡眠,月経前の諸症状から,精神状態を推測したり,
 ●舌上のコケやおりものなどから,代謝の状態を観察したり,・・・・・

こういった観察から状態を判断し,それぞれの不調を改善させることを考えます。

そうして漢方薬を選び,服用していただくことで,上の(1)~(4)のようなことが期待できるのです。

2.基礎体温を測ってグラフにしましょう!

 基礎体温のグラフを見ると,いろいろなことがわかります。
 ●高温期と低温期の二層になっていない:ホルモンバランスが悪い,無排卵など
 ●高温期になりにくく,期間も短い:黄体機能不全,排卵障害など
 ●月経が始まっても体温が下がらない,あるいは再度上昇:子宮内膜症など
 ●日によって体温のばらつきが大きい:自律神経のアンバランス

 基礎体温のグラフは,自分でできて,とても有効な体調チェックです。
 漢方薬の選択でも大変参考になります。

※基礎体温をつけるときには,次の点に注意しましょう!
(1)睡眠時間は6時間以上とる

(2)測定時間はなるべく一定に,ずれは1時間以内を目安に
 基礎体温とは,安静時の体温のことです。ただ,本当の安静時には体温を測ることができないため,いちばん安静時に近い,朝目覚めたばかりの時に測ります。毎日できるだけ同じ睡眠時間をとり,同じ時間に測るのが原則です。

(3)目覚めたら体を動かさずに,すぐに測定する
 先にトイレに行ったり,体温計を振ったりするなど,体を動かしてしまうと,正確な数値が測れなくなってしまうので,体温計はいつも枕元に用意しておき,目覚めたらすぐに口の中に入れ,測ったあとは翌日に備えて,体温計の温度を下げておくようにしましょう。

(4)3周期以上は続けて測定する
 基礎体温は,体の状態を知る貴重な情報源ではありますが,測り続けなければならないわけではありません。3周期ほど続けてみて,ある程度自分の基礎体温の傾向がつかめれば,一時中止したり,気になる時期(排卵期や月経前,不正出血があるときなど)だけ測るというのでもよいと思います。

(5)備考欄にはできるだけ多くの情報を書き込む
 体温表の備考欄には,性交の日,不正出血,おりものの状態,月経痛や排卵痛などのほか,風邪やその他の症状,薬の服用の状態なども書き入れておきます。自分なりにマークを決めておくと便利です。基礎体温をつけられない日は,測ったと勘違いしないために,前後の日を線で結ばずに空けておきます。また,起床時間が1時間以上ずれてしまったとき,睡眠不足の時,その他生活に変化があったとき(飲酒,ストレス,過労,旅行など)などには,その旨も備考欄に記入しておきます。

3.月経周期を整えましょう

 月経周期の延長、短縮、不定や、経血量の増減など、それまでの周期、量、期間などに乱れを生じた場合を月経不順といいます。

 一般に女性の月経周期は25日から35日といわれます。成長期や閉経期あるいは妊娠から授乳の時期を除くと、通常あまり大きな変動はありません。通常の範囲を超えて月経の周期が短くなる場合を月経先期または頻度月経などと呼び、周期が長くなる場合を月経後期とか希発月経などといいます。また、短くなったり長くなったりと不安定な場合を先後不定期と呼びます。妊娠などの特別な理由もないのに月経が3ヶ月以上ない状態は無月経です。

 月経不順の原因として、ホルモンのバランス異常の他、ストレスや体の冷え、貧血などの全身状態との関わりが考えられます。時に子宮筋腫や子宮頸癌などの重篤な病気が隠れていることもあるため、注意が必要です。

 外科的な処置が必要でない場合、ホルモン剤による治療が多く行われますが、漢方薬もしばしば用いられ、よい効果が得られています。漢方薬の選択は、月経の周期がどのようであるかということに加え、月経痛の程度や時期、経血量の多少、月経周期に伴う諸症状や体調変化、平素の体調など、様々なことから総合的に判断されます。

 以下に、よく見られる状態と、一部の汎用処方をご紹介します。

(1)瘀血(おけつ)タイプ
 血行不良で、強い月経痛が見られる。頭痛や肩こりをしばしば伴う。
 ●桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
 ●冠元顆粒(かんげんかりゅう)

(2)血熱(けつねつ)タイプ
 月経周期が短く、量が多くなりやすい。のぼせなども見られる。
 ●温清飲(うんせいいん)
 ●便秘がちなら涼血清営顆粒(りょうけつせいえいかりゅう)

(3)血虚(けっきょ)タイプ
 月経周期が遅くなったり、経血量の減少が見られる。時に貧血様症状を伴う。
 ●婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)
 ●十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
 ●参茸補血丸(参茸補血丸)

(4)気滞(きたい)タイプ
 月経先後不定期になりやすい。経前にイライラや胸部のはりが発生する。
 ●加味逍遙散(かみしょうようさん)
 ●きゅう帰調血飲(きゅうきちょうけついん)

(5)気虚(ききょ)タイプ
 胃腸が弱く、元気がない。周期は遅れることも早まることもある。経血量は減少しやすく、だらだらと出血が続くこともある。
 ●六君子湯(りっくんしとう)
 ●帰脾湯(きひとう)

(6)虚寒(きょかん)タイプ
 冷え症で、周期が延びたり、経血量の減少が見られる。
 ●双料参茸丸(そうりょうさんじょうがん)
 ●当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

4.周期療法って何?

 月経の周期に合わせて,漢方薬を使い分ける治療法があります。
 月経という体調変化をサポートし,より妊娠しやすいコンディションを整える方法です。

 大まかに言いますと,
 (1)月経期
 漢方でいう“気の流れ",“血の流れ"をスムーズにすることで,月経血の排泄が促進されます。月経痛の予防・治療にもなります。

 (2)低温期
 滋養強壮に優れるものを服用することで,卵胞の発育と子宮内膜の増殖が促進されます。

 (3)排卵期
 “気の流れ",“血の流れ"をスムーズにすることで,順調な排卵が促されます。

 (4)高温期
 滋養強壮に優れ,体を保温するものを服用することで,黄体機能が高まり,子宮内膜がやわらかく温かく保たれます。

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