不眠の漢方薬

 最近、不眠で悩んでいらっしゃる方が増えているといわれています。一言に不眠といっても、その症状は様々で、入眠困難、途中覚醒、早朝の起床、熟睡感の欠如といったことが、多く聞かれます。

 睡眠に関する研究では、入眠時に体温が下降していくことが知られており、体温の下降がうまくいかないと、寝つきが悪くなります。そのため食事や入浴、運動などの時間を工夫し、体温の下降を促す方法が、様々に紹介されるようになりました。

不眠の原因

 睡眠を妨げる要因として、夜型の生活環境なども考えられますが、ストレス社会の蔓延も深刻です。イライラする精神的ストレスは、気持ちを高揚させるため、自律神経も活動的な状態となり、体温も下降しません。

 また、非常に多く見られる不眠の傾向に、不安感や疲労感を伴う不眠と、高齢者の不眠があります。

 不安感の原因として上記のストレスも考えられますが、さらに不安感を抱きやすい体質があるということを漢方では論じます。それは、心(こころ)をつかさどる役目の臓器“心(しん)”が栄養不足となり不眠や不安感を引きおこすという考え方です。

 疲労感を伴う不眠や高齢者の不眠も体力の不足が心に及んで発症すると考えます。

不眠のお薬

 不眠に対する安易な服薬はお勧めできませんが、必要に応じて使用することは避けられません。

 西洋医学では、冒頭で述べた不眠のタイプに合わせた様々な薬品が開発され、多くの人が利用しています。一方、漢方でも、上述の不眠の原因に合わせた漢方薬がありますが、十分に活用されているとはいえません。双方の特徴が理解され、これまでより漢方薬も取り入れられると、良効を得られる人も増えるのではないでしょうか。

不眠を治療する漢方薬

 漢方では、眠れず胸中が煩わしい状態を熱的な状態ととらえ、清熱作用のある薬草を用います。代表的なものには山梔子(さんしし)や黄連(おうれん)があります。中国の名医、黄煌氏の著書『張仲景五十味薬証』には「山梔子は、煩熱(心煩不安)があり胸中息苦しいのを主治する。黄疸や心中の痛み、不眠、血尿などに応用される」とあります。

 また、胃腸虚弱や疲労、加齢などで体力の不足がある場合は、体を補い心を安静にするものを用います。

  • 体力があるタイプ
    柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、黄連解毒湯(おうれんげどくとう):頭がさえてなかなか眠れない。落ち着かず、イライラする 。のぼせや動悸、興奮があり、物事に驚きやすい。
  • 中間型
    抑肝散(よくかんさん)、温清飲(うんせいいん)
    情緒不安定で興奮しやすい。のぼせやすく、皮膚の乾燥や鼻出血、月経過多などには温清飲。
  • 虚弱/疲労/加齢
    • 加味温胆湯(かみうんたんとう)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう):胃腸が弱く、イライラが強い。
    • 加味帰脾湯(かみきひとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう):胃腸が弱くて痩せ気味で貧血傾向。不安感や動悸がある。
    • 酸棗仁湯(さんそうにんとう)、天王補心丹(てんのうほしんたん):疲労や加齢が原因で口渇や煩躁もある。

※実際に漢方薬を使用する際は、詳しい相談の上,服用下さい。

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