代表的民間薬 センブリ

 苦い薬草として有名なセンブリは,日本各地の山野に自生するリンドウ科の二年草で,茎丈は20~30cmになります。秋に紫の筋の入った白花を多数咲かせます。

 センブリはドクダミやゲンノショウコなどとともに日本の三大民間薬の一つとされています。民間薬は漢方薬とは区別すべき領域であり,中国の古典を起源とする漢方ではセンブリを用いません。センブリは中国や朝鮮半島にも分布しますが,日本で流通するセンブリは全量日本産です。長野県や高知県での栽培が盛んで,花の時期に全草を採集して乾燥したものが生薬となります。

 センブリの名は,千回振り出してもまだ苦いということから付けられたと言われています。「振り出す」というのは,お湯に薬草を入れて撹拌する方法です。つまり成分を湯の中で振って出すということで,薬草の服用方法としては非常に簡易なものです。ちょうど紅茶をティーバックで入れるような形式です。それを千回繰り返しても苦みが残るというのですから,ものすごい苦みであることが想像できますね。センブリは振り出す他に,煎じる場合もあります。1日量1.5gのセンブリを300mlの水に入れ,水量が半分になるまで煮詰めて服用します。

 苦味健胃薬に分類されるセンブリは,胃弱,食欲不振,胃腸の膨満感,消化不良,飲み過ぎ,胃のむかつきなどに対応します。センブリには当薬(とうやく)という別名もあり,薬効が優れ,よく病に当たって治すということから名付けられたといわれます。

 センブリが使われ出したのは江戸末期のころとされています。医者で博物学者のドイツ人シーボルトが,ヨーロッパにある類似の薬草からヒントを得て,使い始めたとのことです。そうだとすると,比較的歴史の浅い薬草といえます。

 日本人になじみの深いセンブリですが,最近は森林・草地の開発や園芸あるいは薬草目的の採集などにより減少傾向にあるとされ,絶滅危惧種に指定している都府県もあるそうです。ただし現在薬草としての使用量は決して多くはないと思われますし,栽培が可能な薬草です。民間薬としての文化的な意味のある薬草ですから,自然保護の観点も考慮し,上手に使って,大切にして行かなくてはならないと思います。

写真
1.センブリの乾燥品
画像の説明

2.センブリの振り出し
画像の説明