似たもの同士で健康増進

 薬膳では、体の中に具合の悪い部分がある時に、その調子の悪い箇所と同じものを食べると良いという考え方があります。これは「同物同治(どうぶつどうち)」と呼ばれ、たとえば肝臓の悪い時には牛、豚、鶏などの肝臓(レバー)を、心臓が悪ければ心臓(ハツ)を、腎臓が悪ければ腎臓(マメ)を、胃が悪ければ胃(ミノ)を食べると、回復に役立つという考え方です。

 まるで焼き肉屋さんのメニューのようですが、この他にも漢方で活用される動物由来の生薬はたくさんあります。鹿の角やオオヤモリ、牛の胆石、豚の胎盤、それから犬やオットセイの睾丸や陰茎などです。とくに最後の二つは同物同治の考えにも沿う物で、男性不妊などの問題に応用されています。

 また、同物とまでは言えませんが、似たものを応用することもあります。先日中国人医師の方とお話をしていましたら、受験生時代に勉強で疲れた時にはクルミをよく食べていたとのこと。クルミは脳に形が似ているためとお母様からいわれていたそうです。

 漢方書に見るクルミは、胡桃仁(ことうにん)あるいは胡桃肉(ことうにく)と呼ばれ、いわゆる精のつく食べ物の一つであり、頻尿や喘息、便秘、足腰の衰弱、EDなどに効果があるとされています。勉強や運動に精を出した時、あるいは加齢に伴う衰えを感じた時には良いかもしれません。ただ食べすぎますと、お腹を壊したり、吹き出物の原因になったりしますので、注意が必要です。

 少し観点は異なりますが、生薬の活用法として面白い物に次のようなことがあります。尿の出が悪い時には水辺の薬草を使う。むくみや関節のしびれなどにはつる植物を使う。もちろん水辺にあれば何でもいいとか、つる植物なら何でもいいということではないのですが、こういった話題に合致する優秀な生薬がいくつもあることは事実です。

 ところで同物同治はどのような状況でも成り立つわけではありませんから、無理は禁物です。たとえば、胃の悪い時には消化の良いお粥が良いですし、腎臓が悪い時にはタンパク質の摂取を控えなくてはならないことがあります。このように食事制限を伴うような治療過程においては良くないケースも考えられますから、主治医にご相談いただく必要があります。