理想の食生活を考える

 世の中には様々な食事法が伝えられています。
それは,生活習慣病やアレルギー性疾患の急激な増加が,現代の食生活と非常に大きな関連性があると指摘されているためです。

 本来の体の状態を取り戻すためには,どのような食生活が望ましいのか?生活習慣病やアレルギー性疾患に悩む方々は,どのような食事をしたらよいのか?

1.基本としたい自然な食事 そして 体調を考慮した食事

 日本には昔から気候風土にあった食事法があります。それは,身近な旬の素材を摂取するという単純なものです。それがここでいう自然な食事です。これは日本で生活する人々に共通する理想的な食事法と考えます。

 また,中国医学には,病状や偏った体質を食事で治そうという発想があります。そのため一つ一つの食材がどのような効果を持つのかということが,昔から考えられてきました。それが体調を考慮した食事です。体調は人それぞれですから,方法も様々です。自分の体調を考慮して,基本となる自然な食事に加減していただきたいと思います。

 複数の食事法を取り入れようとすると,必ず矛盾が生じます。また,細かいことに気を遣いすぎると,食べられる食材の種類が減ってしまったり,かえって栄養のバランスを崩したり,食の楽しみが失われたりします。

 なるべく大きな視野で,完璧を目差すのではなく,楽しみながら,そしてできるところから実践してみてください。

2.自然な食事について

※栄養士の幕内秀夫先生が挙げる食生活改善10カ条をご覧下さい。

  • 第一条 ごはんをしっかり食べる
    生きていくためにまず必要なのは「でんぷん」と「水」です。ですから主食をしっかり食べましょう。
  • 第二条 飲み物は,水・番茶・麦茶
    水は空気と同じ生命維持物質。体の大半は水です。液体は,水分を補給するものであって,カロリーを摂るものではありません。カロリーのある牛乳やジュースを飲んでしまうと,ごはんが入らなくなってしまいます。
  • 第三条 カタカナ主食の常食はやめよう
     和食にすることで,欧米食に多い砂糖や油が減量できます。
    パン→ごはん スパゲッティ→うどん サンドイッチ→おにぎり スープ→みそ汁 ハンバーグ→がんもどき ハム→ちくわ チーズ→豆腐 ジュース→麦茶 ドレッシング→三杯酢 アイスクリーム→かき氷 クッキー→せんべい ゼリー→寒天 など
  • 第四条 子どものおやつは食事
    おやつ=お菓子という考えを改めましょう。おやつに最適なのはおにぎりと水です。おにぎりは,お金も手間もかからず,食品添加物の心配がありません。おにぎりは満腹になるため,あとを引きません。
  • 第五条 食事は楽しく
    食事中,不安や緊張が続くと,食事そのものが嫌いになってしまいます。また,唾液の分泌が減少し,いくら歯を磨いても虫歯ができやすくなるという説もあります。 楽しく,ゆったりとした食卓をこころがけましょう。
  • 第六条 発酵食品を常食する
    みそ汁,漬け物,納豆などの発酵食品を食べましょう。みそ汁のだしには,子どもの情緒を安定させる力があります。漬け物はすばらしい整腸食品です。
  • 第七条 副食は季節の野菜を中心にする
    ただし,子どもはアクの強い野菜,カロリーの少ない野菜は好みません。無理に食べさせなくても大丈夫。ほかの野菜をみそ汁に入れたり,漬け物にしてあげましょう。
  • 第八条 動物性食品は魚介類を中心にする
    安価な魚を選べば大丈夫。一般に高価な魚ほど薬づけの度合いが高くなっています。
  • 第九条 未精製のごはんを食べる
    玄米,分づき米,胚芽米などを常食しましょう。ただし,玄米はやや食べにくく,幼児では食欲が落ちることがあります。体にいいからと何が何でも玄米にというのはやめましょう。米に雑穀や麦類を入れるのも大変よいことです。
  • 第十条 できる限り安全な食品を選ぶ
    神経質にならない程度に食品の安全性に注意しましょう。

※これは,子どものためにかかれた本に挙げられているものですが,大人にも当てはまると思います。
また,同書に,食事の比率として,全体を「10」とすると,主食(ごはん)「5」,副食(おかず)「5」とし,副食の中身は動物性食品「1」,豆類・種子類「1」,季節の野菜・海藻類「3」を目安とするとされています。

※旬の食べ物にはこんなものが


  • そらまめ ふき うど わらび 菜の花 たけのこ たまねぎ さやえんどう キャベツ しいたけ じゃがいも
    いよかん いちご あま夏みかん
    たい ます ぶり さば たちうお まいわし まあじ ひらめ かれい

  • とうもろこし えだまめ そらまめ いんげん とまと きゅうり なすかぼちゃ おくら ピーマン ふき みょうが ごぼう キャベツ 
    夏みかん すいか もも
    あゆ ます うなぎ かつお どじょう かます あじ まぐろ とびうお くるまえび するめいか

  • しゅんぎく れんこん ねぎ にんじん かぼちゃ はくさい ほうれんそう だいこん かぶ ごぼう しいたけ しめじ さといも
    ぶどう なし かき くり りんご みかん
    わかさぎ さば さけ たい さんま たこ あさり あかがい

  • ねぎ はくさい こまつな ほうれんそう しゅんぎく うど にんじんだいこん かぶ さといも やまいも
    だいだい ゆず りんご みかん
    ひらめ あんこう ぶり たい たら さけ たこ かき はまぐり あおやぎ ほたてがい

※カルシウムについて
 カルシウムは大切なミネラルの一種ですが,そのほかにもカリウム,マグネシウム,リン,鉄など,私たちの体に必要なミネラルはたくさんあります。ミネラルの摂取には,それらの調和がとれた食品をとる必要があります。日本人に適当なカルシウム源としてあげられるのは,次のようなものです。

  • 一、野菜 とくに大根,にんじんなどの根菜類の青菜。 
  • 二、海藻
  • 三、小魚
  • 四、果実

食品100g中に含まれるカルシウム含有量

干しエビ2300mg煮干し2200mg丸干し1400mg
ひじき1400mgわかめ960mg昆布760mg
切り干し大根470mg小松菜290mgカブ菜230mg
大根菜210mg牛乳100mg

【参考図書】
「子どもレシピ」幕内秀夫;主婦の友社
「自然流食育のすすめ」真弓定夫;地湧社
「子どもの病気は食べて治す」真弓定夫;PHP出版社

3.体調を考慮した食事について

 体調を把握するために,中国医学には様々な体の観察方法があります。
「体の機能の中心となる五臓」や「体を構成する基本元素である気・血・水」などの観察が代表的なものです。
 以下にそれらの簡単な説明をして,体調把握とその体調に合う食材探しの仕組みをご紹介します。

①五臓
 今から2000年ほど前に編纂されたといわれる中国の医学書『黄帝内経』には,当時の人々が考えていた内臓の知識が書かれています。現代医学にはない貴重な知識が含まれています。その内臓の主な5つが「五臓」で,五臓には「肝 かん」 「心 しん」 「脾 ひ」 「肺 はい」 「腎 じん」があります。

五臓の関連
画像の説明
五臓の働き


血液をたくわえ流れをコントロールする
新陳代謝をコントロールする
目と筋腱,爪を養う
情緒を安定させる など


大脳の働きをコントロールする
心臓血管の血流をコントロールする
睡眠をコントロールする など


消化吸収をコントロールする
筋肉を形成する
血管を保護する
味覚をコントロールする など


呼吸機能(皮膚を含む)をコントロールする
嗅覚をコントロールする
体温の保持・発汗・防衛
余分な水分を尿として排出する など


成長・発育・生殖・老化を支配する
水分代謝をコントロールする
カルシウム代謝をコントロールする
聴覚・平衡感覚をコントロールする
呼吸をコントロールする など

※五臓に対応する5つの味「五味」の概念があります。
五味と五臓のつながり

酸味
肝を養う。
酸味はものをひきしめ,収斂する作用がある。

苦味
心を養う。
苦味は固める作用と熱を取る作用がある。

甘味
脾を養う。
甘味は調和せさ,補う作用がある。

辛味
肺を養う。
辛味は発散する作用と循環を良くし温める作用がある。

鹹味(塩から味)
腎を養う。
鹹味はものを和らげ,潤す作用がある。

 体が不調となったとき,果たしてどの臓との関係が深いのかを調べることにより,体調にあった食材を探すことができます。

②寒・熱
 様々な症状の観察では,寒性の症状と熱性の症状に大別することができます。

  • 寒性の症状:さむけ 冷え性 代謝機能の停滞 低体温 など
  • 熱性の症状:高熱 発汗 口渇 発赤 炎症 のぼせ いらいら 不眠など

 単純に言うと,熱性の症状が強いときには,体の熱を取る寒涼性の食べ物を摂り,寒性の症状が強いときには,体を温める温熱性の食べ物を摂ります。ところが,一見熱性の症状があっても体の芯は冷えていたり,あるいはその逆があったりするので,注意が必要です。

※五味・寒熱による食品分類

◎肝/酸味

  • 温熱性:酢 もも
  • 平性:すっぽん りんご ぶどう 青梅 すもも
  • 寒涼性:夏みかん レモン みかん かぼす ゆず トマト びわ セロリ 桑の実 ブルーベリー

◎心/苦味

  • 温熱性:竜眼肉 らっきょう シナモン 酒
  • 平性:ぎんなん 百合根
  • 寒涼性:小麦 緑豆 ニガウリ ゴボウ たけのこ ビール ふき 緑茶 緑の濃い野菜

◎脾/甘味

  • 温熱性:牛肉 鶏肉 はも なまこ かぼちゃ れんこん 栗 紫蘇 なつめ こしょう
  • 平性:豚肉 鶏肉 うなぎ 牛乳 蜂蜜 米 とうもろこし 大豆 黒豆 ぎんなん さつまいも やまいも にんじん キャベツ いんげん もやし りんご ぶどう いちじく パイナップル
    寒涼性:小麦 はとむぎ そば 豆腐 白菜 冬瓜 大根 柿 西瓜 バナナ 梨 トマト 茄子 きゅうり セロリ みかん メロン クレソン もやし

◎肺/辛味

  • 温熱性:唐辛子 にんにく シナモン しょうが こしょう 山椒 わさび らっきょう 紫蘇 ねぎ にら 酒 菜の花
  • 平性:しろきくらげ ぎんなん 落花生 百合根 かぶ 里芋
  • 寒涼性:梨 柿 西瓜 大根 バナナ イチゴ

◎腎/鹹味

  • 温熱性:羊肉 えび うなぎ なまこ くるみ にら
  • 平性:あわび くらげ いか 貝柱 豆 ごま
  • 寒涼性:牡蠣(かき) しじみ あさり 海藻 のり 塩 みそ あしたば キウイフルーツ

③気・血・水
 体を構成する基本的元素として,中国医学では気・血・水を考えます。これらは五臓の働きにより生じ,そして五臓を構成する物質として,五臓を動かすエネルギーとしてさらには免疫力としてなど,様々な役割を果たします。
 ところがこれらの質やバランス,循環が悪くなると,体力や機能が低下し,様々な病気を引きおこす原因となります。
 どのような気血水の異常かによって,様々な対処法があり,食事の上でも気をつけたいポイントがあります。
◎気虚タイプ/気(気力・体力)不足

  • おすすめの食材:牛肉 鶏肉 うなぎ 鶏卵 えび 山芋 かぼちゃ たまねぎ にんにく ねぎ しょうが まめ 納豆 きのこ 栗 りんご ほうじ茶 紅茶 緑茶など 
  • 控えたい食材:冷たいもの 生もの 油っこいもの チョコレート 刺激の強い食材(唐辛子 わさび)など

◎気滞タイプ/気の循環不良

  • おすすめの食材:レバー いか あさり しじみ 発芽玄米 香り野菜(セロリ,せり,三つ葉,ミントなど) 百合根 ニガウリ 陳皮 くこの実 菊花 柑橘類 ミント茶 ジャスミン茶 バラ茶 ラベンダー茶など
  • 控えたい食材:味の濃いもの イライラや頭痛があるときは辛いもの ガスやゲップの多いときはいも類や豆類

◎血虚タイプ/血が少ないまたは機能低下

  • おすすめの食材:レバー 豚肉 烏骨鶏(または地鶏) ウズラ卵 黒米 黒豆 プルーン 人参 トマト なつめ 牡蠣(かき) ほうれんそう ほうじ茶 紅茶
  • 控えたい食材:冷たいもの 生もの 油っこいもの チョコレート 甘いもの 辛いもの

◎瘀血タイプ/血行不良

  • おすすめの食材:いわしやさんまなどの青魚 かに どじょう 玄米 タマネギ ニンニク らっきょう にら ねぎ しょうが 黒きくらげ,シナモン サフラン 黒酢 桃 ウコン茶 紅花茶 バラ茶 シナモン茶
  • 控えたい食材:脂肪とくに肉の脂身 バター 甘いもの 塩辛いもの 味の濃いもの 冷たい飲み物 アイスなど

◎陰虚タイプ/体水分の不足

  • おすすめの食材:豚肉 鴨肉 鶏肉 スッポン はまぐり あわび 黒米 豆乳 豆腐 れんこん きゅうり トマト 百合根 ごま 白きくらげ 梨 ライチ レモン メロン ミント茶 緑茶 菊花茶
  • 控えたい食材:香辛料 薬味野菜 冷たいもの

◎痰湿タイプ/余分で質の悪い水分の停留

  • おすすめの食材:玄米 はとむぎ 海藻 きのこ たけのこ 根菜(ごぼう,だいこんなど) アスパラガス カボチャ こんにゃく 緑豆 さんざし ウーロン茶 プーアール茶 はと麦茶など
  • 控えたい食材:肉類 卵黄 魚卵 油っこいもの 味の濃いもの 炭酸飲料 水分(とくに冷たい飲み物に注意)

【参考文献】
「薬食同源」長崎中医薬研究会
「中医学読本」高橋楊子;クロワッサン672号付録
「キッチン漢方ハンドブック」猪越恭也,江上栄子;PHP研究所

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