大豆の恩恵

 二月三日は節分ですね。皆さんのお宅では豆まきをなさいますか?我が家では,柊の枝に鰯の頭を刺したものを戸口に立て,各部屋から倉庫,トイレに至るまで,家中の鬼を祓い福を招く大切な行事として豆まきを行っています。

 豆まきに使われる豆は,大豆を炒った物が一般的です。大豆は古くから栽培されており,米,麦,あわ,きびなどの穀類とともに五穀に数えられていました。古来とても身近な存在であったわけです。

 大豆は発芽させるとモヤシになり,しぼれば大豆油がとれ,炒って粉にするときな粉ができます。発酵させれば醤油,味噌,納豆。水に浸してすりつぶし、さらに加水して煮つめた豆汁をこすと豆乳になります。その残りはおから,豆乳を熱すると液面には湯葉,にがりを入れて固めると豆腐,さらには焼き豆腐に厚揚げ,薄揚げ,高野豆腐。シンプルな煮豆や我らが郷土料理“しもつかれ”も忘れてはなりませんね。
 普段何気なく口にしている物ばかりですが,改めて挙げてみると,大豆のもつ素材力の豊かさに驚かされます。またこれらを創出してきた先人の知恵にも頭が下がる思いです。

 植物の中では肉に匹敵するほどのタンパク質を含む稀な食材であるため「畑の牛肉」と呼ばれ,生産量世界一のアメリカでは「大地の黄金」とも呼ばれているそうです。

 大豆の生薬利用

 漢方の世界では大豆の利用は決して多くはないのですが,重要な処方に含まれることもあります。

 大豆由来の代表的な生薬である淡豆豉は,タントウシあるいはタンズシと呼ばれ,麻婆豆腐などに加える調味料のトウチと同じ物です。黒大豆を発酵し乾燥させたもので,いわば黒大豆の干し納豆です。淡豆豉の薬効は,熱によって生じる煩燥感(胸苦しい感じ)を取り除く作用とされています。熱性の感冒に汎用される銀翹解毒散(ぎんぎょうげどくさん)などに含まれています。

 また,もやし状態の黒大豆を乾燥させたものは大豆黄巻=だいずおううけん,或いはだいずおうかんと呼ばれ,夏場の湿気と暑さによる下痢や関節のしびれなどに効果的とされています。大豆黄巻は日本では馴染みが薄く,配合される処方は非常に稀です。

 食品,薬材,さらには邪鬼祓いにまで利用される大豆の恩恵は量りしれませんね。