子どもの漢方

 小さいお子さんでも漢方薬による治療が効果的な場合があります。しばしば薬の説明書では服用量を減じて子どもの量とされていることが多いですが,子どもの体は単に大人を縮小したものではありません。大人とは異なる子どもの時期の特徴を考慮しなければなりません。

 漢方には「稚陰稚陽(ちいんちよう)」という子どもの状態を表す言葉があります。「陰」と「陽」のどちらもが幼稚であるということです。ここでいう「陰」とは筋骨・内臓・血脈など体そのものを意味し,「陽」とは気力・体力・免疫力などの機能的あるいはエネルギー的なものを指します。つまりは全身が未熟であるということで,子どもは病気にかかりやすく,またその変化が速いことに留意する必要があることを示唆しています。
 さらに子どもは「純陽の体」という概念もあります。この「陽」は前出の「陽」とは若干異なり,日に日に成長していく旺盛な生命力を有していることを「純陽」と表現しています。

 これらの概念を元に,子どもの治療,とくに慢性的なものにおいては心身を補い,成長を促していくことを念頭に置きます。

 子どもへの使用頻度が比較的高い処方に小建中湯(しょうけんちゅうとう)があります。小建中湯を構成する生薬には,体の血肉の生成を促したり,気力体力を高めるようなものが含まれており,まさに「稚陰稚陽」を補い「純陽」を高める処方と言えます。また子どもに見られやすい神経の高ぶりや,精神的な腹痛や頭痛に対して,心身の緊張をほぐして症状を軽減する作用もあります。日常的な腹痛・下痢・便秘や夜尿症,血色不良,ストレスによる諸症状などに幅広く応用されます。

 小建中湯には類似する処方が多数知られており,そのいくつかは同様に子どもに多用されます。代表的なものとして,虚弱体質の改善に有効な黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)や,神経過敏・夜尿症などに用いられる桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)が挙げられます。

 いわゆる疳の強い子に汎用される処方に「抑肝散(よくかんさん)」があります。夜泣きの激しい子やすぐカッとなってしまう子に有効です。

 皮膚炎や耳鼻科系の症状がある場合には,対症療法的に苦味の強い消炎の生薬を用いることもありますが,基本的には「稚陰稚陽」「純陽の体」を意識し,成長を見守る優しい処方を選択します。