春と「肝」

 新しい年度がスタートしました。職場や学校が変わった方もおられることでしょう。新しい環境に慣れるまでは何かと緊張し,精神的な疲労が多くなります。精神的な疲労をため込まないためにも,バランスの良い栄養と十分な睡眠をとることが大切です。
 春は自然界でもスタートの季節です。様々な動植物が陽の光を受けて動き出します。冬の間の殻を破り,のびのびと伸長して行きます。ですから人も春には心を伸びやかにし,余りしいたげられるようなことは慎むべきだと養生書に説かれています。
 このような意味において,人間社会の春の緊張状態は,自然の法則に反する不自然なことと言えるかもしれません。春に養生を怠って無理をしていると「肝」を病むと言われています。ここでいう「肝」は漢方でいう五臓六腑における「肝」であり,「肝を病む」=「肝臓病」ということではありません。
 五臓六腑は「肝・心・脾・肺・腎」の五つの臓と「胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦」の六つの腑を指します。各臓腑が担当する役割を果たし,また連携しあって心身の生命活動が営まれます。「肝」にはこの臓腑間の連携がうまくいくように統制する役割があります。この働きは現代医学でいう自律神経やホルモン,また情緒などのバランスを調整することに相当します。臓腑の連携がうまくいかずギクシャクすると「肝を病む」状態となります。例えば自律神経失調症や女性の月経前症候群,またイライラして怒りやすいといった状況は「肝」のトラブルと理解します。

 「肝」にはもう一つ,「血を蓄える」という重要な働きがあります。活動時に心身を巡っていた血は,夜になると「肝」に帰るとされます。夜更かしをしていると,血の消耗が多くなり,肝の失調を引き起こします。
 「肝」を養うには,旬の色の濃い野菜を多くとるとよいと言われます。肉や魚は野菜の半分程度が適量でしょう。また少量の酸味の物を加えると「肝」への作用が高まるとされています。

 緊張すると肩に力が入ります。意識的に肩の力を抜きながら,ゆっくりと息を吐き出してみましょう。ちょっとのことですがリラックスに役立ちます。