春は発陳(はっちん)

 春は発陳の季節。約二千年前に書かれた漢方の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」の言葉です。発陳とは古いものを押し開いて新しいものを出すという意味があるり,春は地球上のあらゆる生気が発動し,すべてのものが生き生きと栄えてくる季節であることを表します。人間も自然界の動きに合わせ,心身を伸びやかにして,しいたげることは慎まなければいけないとあります。

 新年度を迎え,まさに新たな発動の状況にある方もおられることと思います。また中には,新しい環境に慣れるまでストレスを抱えてしまう方もおられるかもしれません。仕事の後や休日にはできるだけ心身伸びやかに過ごすことが大切です。

 ちなみに冬は閉蔵(へいぞう)の季節と言われます。寒い冬の間,ひっそりと生気や陽気を体に蓄え,漏れ出ないようにすべきであるということです。生気が蓄えられていないと,春になって体が萎えてしまったり,手足が冷たくなったりするとも伝えられています。

 「黄帝内経(こうていだいけい)」が書かれた当時,冷暖房のない時代ですから,冬の間に暖を維持するのは大変なことだったろうと思います。対して現代は冷暖房が充実していますが,それでも冬の寒さによる疾病がなくなくことはありません。ですから季節ごとの養生には,いにしえの智恵も参考となるのだと思います。

 人の生気は正気ともいい,心身の気力,体力,栄養などを意味します。これが充実していないと体に力が入らず,倦怠感が生じたり,さらには外から攻撃してくる邪気に犯されやすくなります。正気が充実していれば,邪気を跳ね返し,成長も活動も順調に進むことでしょう。樹木に例えれば,しっかりとした根幹からは,生気あふれる芽吹きがあり,枝葉を伸ばすことができます。

 さて,冬の間,生気を蓄えることができなかったとしても,諦めることはありません。生気を蓄える上で大切なのは,食事と睡眠です。バランスの良い食事を心がけ,疲れを残さない睡眠時間を確保することが理想です。とくに現代人はビタミンやミネラルが不足しがちだと言われます。これらが豊富な緑黄色野菜や魚介類を努めて摂り,化学調味料などは控えることが肝要です。また,香りの良い野菜は,生気の動きを促すため,春にはもってこいです。ふきのとうやウドなどを活用すれば,旬を楽しむこともできます。