温活と漢方薬

 最近「温活」という言葉をよく目にします。冷え性体質を予防・改善すべく積極的に体を温めることです。体が温まると血行が良くなり,免疫力は上昇し,様々な疾患の予防となります。昨今は冷えの原因となる生活習慣が増えていますから,体を温める意識が広がることは喜ばしいことです。

 温活の具体的な方法はテレビや書籍,雑誌などで紹介されています。食事や入浴,厚着などの単純なものから,運動,マッサージ,お灸といった知識や技術を要するものまで様々です。

 中でもよく見かけるのがショウガです。ショウガ紅茶を初めとするレシピのほか,ショウガの加工食品なども掲載されています。またショウガは一度蒸すと温める成分が増えることから,その作り方などを解説する記事もあります。

 漢方でもショウガは重要な生薬です。もともと漢方にはショウガを生のまま・乾燥したもの・蒸して乾燥したもといった加工の違いによる使い分けをする知恵がありました。生のものは鮮姜(せんきょう)といい,発散力があるため寒気がするときに有効です。乾燥したものは生姜(しょうきょう)と呼び,発散力と保温力を備えます。一度蒸して乾燥させたものは乾姜(かんきょう)と呼び,保温力が強くなります。

 ショウガとともによく用いられるものにシナモンがあります。シナモンには発散力や保温力に加え,血行改善の働きがあることも注目されています。漢方ではシナモンの仲間であるニッケイやシナニッケイの樹皮を用います。

 ところでこれらのショウガやシナモン,ニッケイを相当に摂取していてもなかなか冷えが取れない人がいます。根本的に改善していないのです。漢方薬の分類で生姜やニッケイは散寒薬と呼ばれ,外界から侵入した寒気(外因の冷え)や,体内循環の滞りで生じた冷え(内因の冷え)を温めて追い払う薬です。ある意味対症療法といえます。元来体温を作りだし維持する体力が不足していると(根本の冷え),単に温めるだけでは限界があるのです。このような方には朝鮮人参のように体力を高めるものや,補陽薬と呼ばれる自身を温める機能を亢進する薬物を使います。その中には例えば鹿の角やオオヤモリ,冬虫夏草,胎盤など,特殊な生薬が並びます。

 さらに冷えは,運動不足による筋肉の衰弱や血行不良,ストレス過多,睡眠不足,食生活の乱れなどにも起因します。原因に合った対応をすることでより有効な温活を目指しましょう。