漢方書に見る五月病対策のヒント

 ゴールデンウィークが終わる頃、心身が重だるく、やる気が出ない、人との関わりが億劫、食欲不振、不眠といった症状が出てくることがあります。いわゆる五月病です。とくに4月から新しい生活をスタートした人に多く、環境に適応できずに大きなストレスを抱えてしまうことが原因とされています。

 漢方の古典『黄帝内経(こうていだいけい)』にも、五月病を連想させる記述があります。意訳して紹介しますと、「春はあらゆる生気が発動して生き生きと栄えます。人々は少し遅く寝て、少し早く起き、体を伸びやかにし、心持ちを生き生きとさせて、まるで生まれたばかりの万物の様にするべきです。心身の活動を妨げぬようにすることが春に適応する道理です。道理に反すると、肝気を損傷し、夏になって、暑さに対応できず、より隆盛になる夏の気に適応する能力が減少してしまいます」

 心身の活動を最も妨げるものは、ストレスと言えるでしょう。何かと忙しい現代社会、とりわけ年度初めのこの時期に、どれだけこの教訓を活かすことができるでしょうか?

 ここで損傷してしまう肝気とは、五臓六腑の一つである肝の働きを
意味しています。西洋医学の肝臓は一旦忘れていただき、漢方における肝の働きには、血を蓄えることや、心身の各機能を連携させることなどが挙げられます。機能の連携は今でいう自律神経の役割と考えられます。つまり肝気が損傷した状態は、自律神経の失調に相当する場合が少なくありません。

 それから夏の気について説明すると、万物が花開き、実を結ぶ季節であり、人々は体内の陽気を外に発散することが大切とされています。発散できないと、今度は心気を損傷し、秋の気にも適応できなくなってしまいます。体内の陽気を発散するには、気持ちを愉快にして、適度に汗をかくような活動が必要です。

 一般的に気が張ったり、詰まったりしたら、発散して気晴らしをすることが有効です。しかし、心身が疲労困憊の状態にあると、発散するだけの体力がありません。無理をすれば逆効果です。その様なときは心を養うとされる素材を利用します。竜眼肉(りゅうがんにく ムクロジ科リュウガンの果肉)や蓮の実、百合根、ナツメなどが漢方や食養生で活用されます。

写真1:蓮の実を蓄えた果托
画像の説明

写真2:実の中心にある胚芽は苦みが強く、心を落ち着かせるとされる
画像の説明