漢方薬のアロマ効果

 新年度が始まりました。新しい環境の中で緊張感のある日々を送っている方もいらっしゃることと思います。ある程度の緊張感は心身の推進力となり,活動を充実させるには欠かせないものかも知れません。しかし負担の大きい緊張感は精神的ストレスとなって生活の質を落としてしまったり,甚だしければ体調を崩してしまうこともあります。

 最初は軽度の疲労や肩こり,頭痛,食欲の亢進あるいは減退などがみられますが,長引くと胃腸障害,めまい,動悸,不眠などにおよび,さらに重症化する可能性もあります。症状がひどくなる前に対処したいものです。

 ストレスによる諸症状の多くは,「気の流れの乱れ」と漢方では考えます。気の流れがスムーズであれば,体の様々な機能が順調に連携するのですが,気の流れが停滞すると連携がうまくいかなくなり,精神的にも肉体的にも様々な症状が発生します。

 病院の検査では異常値が見られないことも多く,自律神経の問題,あるいは「気のせい」と片付けられてしまうこともあります。漢方ではまさに「気のせい」ですから気を調節します。

 気の流れが滞った時に用いる生薬を理気薬と呼びます。気の流れをととのえる生薬です。この理気薬の多くに共通する性質が,良い芳香を有するということです。

 代表的な理気薬にミカンの皮である陳皮(ちんぴ)があります。陳皮は消化器系の失調に使うことが多く,腹が張って苦しい,食欲がない,吐き気がするといったときに用いられます。同じミカン科のダイダイやレモン,仏手柑(ぶっしゅかん)などの実や皮も同様に用いられます。

 シソ科のシソやハッカはストレスでイライラしたり,のどのつかえ感,焦燥感などが生じたときに多用されます。

 お香の材料になる沈香(じんこう)や白檀(びゃくだん)も理気薬です。これらは比較的高貴な生薬ですが,少量で良効を示します。

 芳香性のあるオイル成分を用いて心身のケアをするアロマセラピーが有名ですが,お香を焚いてリラックスするのも手軽にできていいものです。漢方における治療では基本的に理気薬を単独で用いることはせず,他の生薬と組み合わせて状態に応じた方剤として用いますが,ちょっとストレスを感じたときなどは,身近な香りの素材を楽しんで,気晴らしをしてみてはいかがでしょうか。