秋の味覚“ナツメ”

 秋になると梨や柿、リンゴ、栗などの果実が旬を迎えます。子供の頃、柿の木や栗の木が身近にあり、収穫もまた楽しみの一つでした。

 梨や柿は体を潤す作用があり、ほてりやすい人には向いている食べ物です。冷え症の人やお腹のゆるい人では控えめに楽しみましょう。

 栗は胃腸を健やかにし、足腰を強くするともいわれますが、多食するとお腹が張ります。

 同様に秋に甘く熟す果物で、漢方でも重要な生薬となるものに“ナツメ”があります。ナツメの実は長さ1.5cm~3cmほどの円柱形をしています。漢字では“棗”と書きますが、ナツメという呼び名の由来は、夏に芽を出すからとのことです。

 漢方ではナツメの実を乾燥した物を大棗(たいそう)と呼び、腹痛や痙攣などの急激な症状の緩和作用や、滋養の効果があるとされ、多くの処方に含まれます。

 ナツメは中国原産ですが、かつては日本でも相当に栽培されていたようです。万葉集にはナツメを詠んだ歌が二首あり、また貝原益軒は『大和本草』(一七〇八年)に「毎年実を豊穣に付けるので、貧しい人は沢山植えて飢えを助くべし」と記しています。現在でも飛騨地方では甘く煮て食べる習慣が残っているそうですが、梨や柿と比べて瑞々しさで劣るせいか、一般的に生活の中でナツメの木や実を見ることはほとんどないですね。それでもナツメというほのぼのとした優しい音は人名や社名などにも使われ、時折耳にします。

 一方中国では、現在でも収穫期になるとカゴいっぱいに積まれたナツメが店頭に並びます。またナツメの加工食品は一年中スーパーなどにあり、砂糖や阿膠(ロバの皮から取れる煮こごりで、漢方でも止血薬・補血薬として使用する)などで煮からめたものが有名です。

 今このナツメの木を、中国の砂漠地帯に植林する事業を進めている団体が、茨城県にあります。日本にも飛来して問題となる黄砂の減少に役立つことが期待されています。その植林で得られたナツメの実は、砂糖煮にして日本で販売し、その利益がまた緑化の活動費に当てられます。

 8月下旬に訪れた栃木県中央公園にナツメの木を見つけました。暑い日差しの中で沢山の実を付けていました。

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