米の効用

 日本の国民食といえる“お米”。しかしその消費量は年々減り続けています。現在,日本人一人あたりの米の消費量はピーク時の昭和37年と比べて半分以下にまで落ち込んでいるそうです。その原因としては食の多様化が考えられます。パンや麺などの消費増加が米の消費を抑えていることは容易に想像できますし,ここ数年は糖質制限食の流行があり,この影響も少なくないかもしれません。

 昨今,健康的な食事法としていろいろなものが紹介されており,それらを比較すると矛盾が生じることも多々あります。米の摂り方についても様々です。それぞれ根拠・言い分がありますが,それらの善し悪しは他書に譲り,本稿では漢方の見地から米の役割についてお話ししたいと思います。

 一言で「米」といいましても,様々な米があります。例えば,粘性の違いから粳米(うるちまい)と糯米(もちごめ)。また色では白米の他に,赤米や黒米などの有色米があります。そして様々な栽培品種(銘柄)があることは言うまでもありません。

 私たちが一般的によく口にするお米は白い粳米です。同じ粳米でも精製をしていない玄米は,精白米よりも栄養面で優れており,大変見直されています。漢方薬にはこの玄米を生薬として含む処方があります。生薬名は粳米とかいて“こうべい”と読み,代表処方として麦門冬湯(ばくもんそうとう)や白虎湯(びゃっことう)が挙げられます。

 麦門冬湯は粘膜を潤す働きに優れ,咳が長引いて咽の乾燥や,切れにくい痰を伴うときの重要処方です。この処方では,体を補い潤すものとして,麦門冬,薬用人参,ナツメなどとともに粳米が用いられています。

 白虎湯は強い熱感と発汗により,口や咽が渇いたり,イライラして落ち着かない状態を治療する処方です。比較的体の熱を取る作用の強い
石膏(せっこう),知母(ちも)という生薬がこの処方の主薬であり,粳米は体を滋養するとともに,石膏・知母による胃腸への障害を和らげる働きを担います。

 そのほか中国医学の古典には,粥についての記載が多く見られます。生気を補う,五臓を元気にする,下痢を止める,命のより所である,無理に食べると病を起こす,胃に水分が溜まっているときは控える,病人や産婦は粥で養うのが最適・・・。私たちも小さい頃からカゼの時や体調不良の時,お粥を食べてきました。米にはありがたい力があると先達の経験が語っているように思います。