糖尿病と漢方(後編)

 糖尿病で恐ろしいのは合併症。『神経障害』『網膜症』『腎症』は三大合併症と呼ばれると,前回の本欄で記載しました。これは,高血糖によって毛細血管が障害を受け,血行が悪くなることで引き起こされると言われています。

糖尿病と血行障害の関係

■日本での新しい見解:一方,昨年2月の下野新聞で『つくば市の歯科医,松本行洋さんらの研究チームが,生活習慣による糖尿病(2型糖尿病)は毛細血管の血流が滞ることから始まるとう学説をイギリスの医学誌に発表した』という記事が掲載されました。従来,毛細血管循環の悪化は糖尿病の結果とされていた関係をひっくり返す内容です。運動不足,ストレス,過食などによって毛細血管の血行不良が発生し,そのことで血糖値を下げるインスリンの運搬・作用が低下し,糖尿病への悪循環や合併症へと進展するという説です。いずれにしましても,血行をよくしていくことが大切と言えそうです。

■血行障害に用いられる漢方薬:昨年の3月,中国中医科学院広安門病院の副院長で,中国医学による糖尿病治療の第一人者である仝小林(トン・シャオリン)先生の講演会が東京で開かれ,私も参加いたしました。そこで語られた内容も,肥満症や糖尿病といった代謝異常による疾患には程度の差はあっても血行障害があり,血管保護・血行改善が大切であるという趣旨のお話でした。血行改善に優れる生薬としては丹参(たんじん),川芎(せんきゅう),桃仁(とうにん),紅花(こうか)などを挙げられ,さらに重度の血行障害にはチスイヒル,ミミズ,シナゴキブリといった虫類の生薬(薬用に養殖されたもの)を利用することもあるとのことでした。

正しい診察と症状にあった投薬

 実際の漢方治療では,血行改善だけでなく,様々な体質を考慮して薬を選択します。漢方薬を用いるメリットは,随伴する症状や体質を改善することにより,糖尿病の悪化や合併症の発生に対する,軽減・予防効果が期待できるということです。
 ただし糖尿病の治療では,食生活の改善や運動も大切で,さらに様々な血糖降下薬やインシュリン製剤といった西洋薬が必要な場合も少なくありません。糖尿病と診断されたらきちんと医師の診療を受け,その上で漢方薬の利用をご検討下さい。

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