脳と漢方

中国古代医学における脳の認識

 頭の中に脳があるということは,二千年前の漢方書ですでに述べられています。当時の認識では,体中の精気(せいき)が集まるところで,精気が集結することによって目や耳などの機能が果たされるとされています。

 精気というのは人間が生きるためのエネルギーです。誕生時には両親から受け継いだ先天の精気を有し,その後飲食物から吸収する後天の精気が蓄えられます。精気を蓄える場所は五臓六腑の一つ「腎(じん)」です。腎は体の各器官へ活動に要する精気を供給しており,脳の機能も支えているのです。

老化と脳

 腎の精気の量は成長とともに増大し,三十歳代をピークに減少を始めます。加齢によってある程度精気の減少が進むと,いわゆる老化現象が現れ始めます。ですから脳や目,耳,骨,腰などの機能をできるだけ健やかに保ちながら老いるためには腎を養うことが重要です。精がつくと言われるヤマイモやサンシュユの実,キノコの一種ブクリョウなどを含む八味地黄丸(はちみじおうがん)や六味地黄丸(ろくみじおうがん)は腎を補う代表的な漢方薬です。

画像の説明

サンシュユ
('06年3月21日栃木県中央公園にて)
3~4月,黄色く小さな花をたくさんつけ,実は秋に赤く熟す。中国原産で日本では庭木にされる。

 

血流・代謝の問題

 腎の状態のほかに重要とされているのが,血流や水分代謝・脂質代謝です。現代医学では,脳梗塞や脳卒中,血管性認知症などで脳内の血流の状態が問題となります。漢方では局部的な痛みやコリ,冷え,舌の暗色化などにより血行の状態を判断し,対策をとります。また脂質代謝は,現代医学では血中のコレステロールや中性脂肪などが指標となりますが,漢方では舌上の苔の付き方や,体格,むくみ,発汗,めまいなどの状態で水分や脂質の代謝を判断します。漢方薬にも血流や代謝の改善に役立つものがありますが,生活習慣の見直しも不可欠です。

思考や感情をつかさどる心(しん)

 脳の重要な働きとして思考や感情を担うことも挙げられますが,漢方ではこれらの働きは五臓六腑で行われているとされています。特に重要なのは胸部に存在する心(しん)です。心は血流を全身に送る役割のほかに,心(こころ)の活動を統括していると認識しているのです。不安感や不眠などで使用される漢方薬には,養心安神薬(ようしんあんじんやく)と呼ばれるものがあります。心を養い精神を落ち着かせる働きがあるとされ,ナツメやコノテガシワの種子などが用いられます。

※実際に漢方薬を服用する場合は,専門家とよくご相談下さい。

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