花粉症の原因

 スギやヒノキの花粉症の方にとってはつらい季節がやってきました。

 スギの花粉症が最初に世に発表されたのが1963年,杉並木で有名な日光の患者さん達の症例がもとになっています。発表者は耳鼻咽喉科を専門とする元東京医科歯科大学助教授の斎藤洋三先生です。東京から日光の病院に赴任した斎藤先生は,毎年春になるとなぜかこの病院では「くしゃみ,鼻水,鼻づまり,目のかゆみ」に苦しむ患者が増えるということを知ります。斎藤先生が病院へ通う道すがらは杉林になっていて,スギの花に触れたときに落ちた黄色い花粉を見て,これが春のくしゃみ・鼻水・・の原因ではないかとひらめいたそうです。そしてその因果関係を突き止め発表に至っています。発表の後も花粉症の研究を続けた斎藤先生の口癖は「鼻屋が花屋になった」だったそうです。

 花粉が原因となり,アレルギーが引き起こされる事は分かりましたが,この現象は戦前までは報告がなく,現代になってなぜ増えてきたのかについては,明確な答えがありません。スギの多い日光が最初の研究の舞台となりましたが,その後急増した花粉症は,地方よりも都市部での広がりが大きく,飲食物の欧米化や排気ガスによる大気汚染,ストレスの影響,抗生物質の発達による感染症の減少などが関係していると考えられています。

 最近では腸の状態が免疫に関わるとして,発酵食品や乳酸菌などを使った製剤,サプリメントが流行しています。

 またアレルギーの原因物質を低濃度で投与することによって体内にアレルギー反応とは異なる免疫の仕組みを作っていく減感作療法という新しい治療法も出てきています。

 数年前の本欄で,私自身の花粉症体験を紹介したことがあります。薬剤師国家試験を受験した1994年の4月初め,2日間にわたる試験の間,私は水のような鼻水とくしゃみに苦しめられました。他の症状はなく,しかもこの2日間だけです。ちょうど引っ越しの時期でもあり,ストレスは相当でした。このときの症状が花粉症であるとは断言できませんが,ストレスや疲労で体の免疫系や自律神経系などが崩れると,様々な刺激に対して極端な反応が出る可能性があると考えています。いまだ決定的な対策はなく,より有効な治療効果を得るには,様々な生活習慣の見直しも必要といえるでしょう。

写真:スギの花と花粉
画像の説明
写真提供:金沢大学薬用植物園