葛根湯医者(かっこんとういしゃ)

 寒く乾燥するこの季節、しばしばカゼの流行が見られます。カゼに有効な漢方薬もいろいろありますが、最も有名な漢方薬「葛根湯」もその一つです。その知名度を裏付けるものとして、落語の小話に「葛根湯医者」というのがあります。

「先生、頭が痛てえんで」「ああ、頭痛だな。葛根湯を煎じて飲みなさい」「先生、おなかが痛いんでございます」「腹痛だな、葛根湯をおあがり」「先生、目が痛くて」「ああ、葛根湯をおあがり。はい、次の方」「いや、私はつきそいに来ただけで・・」「まあいいから葛根湯をおあがり」・・・どんな病に対しても葛根湯を用いる藪医者を滑稽に描いています。

葛根湯はカゼ薬?

 さて“葛根湯と言えばカゼ薬”という印象が強いのですが、漢方家として名高い先人達の記録を見てみますと、カゼ以外にも肩こり、腰痛、下痢、視力障害、皮膚炎、乳汁分泌不足などの治療に葛根湯を用いて良い結果が得られているのです。でも決して葛根湯医者のように安易に用いているのではありません。葛根湯の本質をきちんととらえた上でお腹や目の病にも応用しているのです。
 このように、様々な病を同一の方法で治療することを「異病同治」といいます。また、同じカゼの初期でも葛根湯ではなく、他の処方で治療する場合も多く、このようなことを「同病異治」といいます。「異病同治」や「同病異治」は漢方薬が単に病名によって処方されるのではないということを表しています。

葛根湯だけじゃないカゼの漢方薬

 葛根湯で治すことができるカゼは、ゾクゾク寒気がしてうなじや背がこわばり、発熱や頭痛は軽度で、発汗のない状態です。このときもし発汗が見られたり、虚弱な子供などの場合は桂枝湯(けいしとう)を用います。水っぽい鼻や痰が多いときには小青竜湯(しょうせいりゅうとう)が有効です。咽の痛みを併発しているときは、桔梗(ききょう)や石膏(せっこう)、連翹(れんぎょう)などを加えます。鼻やのど、発熱などの症状がほぼ治まってきたら、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)などに切り替えます。なかなか治りきらない時や、吐き気・軟便などを催すカゼにも柴胡桂枝湯は用いられます。寒気はなく,発熱,咽痛などが主症状の場合は,銀翹散が有効です。このほか状況によって様々な処方が使われますので、ご使用の際には医師や薬剤師によくご相談ください。

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