身土不二(しんどふじ)の考え方

 漢方などの伝統医学や,民間療法,自然食などに関する話題の中で,時折耳目に触れる言葉に「身土不二」があります。身体と生きる環境は一体であり,身体を養う食べ物は自分の住む土地のもので全てまかなうという考え方です。

 伝統医学の中で身土不二を最も重んじているのはインドのアーユルヴェーダです。普段の食事も,治療に要する薬草も,自分の住む土地から求めます。昨今このアーユルヴェーダを日本で実践する人もおられますが,インドの薬草を日本で用いたのでは身土不二の原則に反します。

 一方中国ではどうかといいますと,あまり身土不二にはこだわりがないようです。紀元前3世紀,秦の始皇帝の命を受けた徐福が,不老長寿の仙薬を探し求めて朝鮮半島を経て日本へやってきたという伝説が残っています。また現在,中国でも日本でも,漢方で使用される生薬はかなりの広範囲から集められているのも事実です。

 動植物は各季節,各環境に応じた姿を呈します。動物達がそれぞれに暮らす環境の中で各季節に採れるものを食べるのは,自然界では当然のことであり,昔の人々にとっても当たり前のことであったはずです。その季節を乗りきる力を持った旬の食材は,身体の維持に必要不可欠なものなのではないでしょうか。ですから身土不二に基づく食事は基本であり,かつ重要と考えられます。流通が盛んで,他の地域・季節の食材が簡単に手に入る現代だからこそ,あえて叫ばれているのでしょう。

 また病気の治療においても,動物は調子の悪いときに食べるものを知っているという話も聞き覚えがありますが,漢方を実践する立場で考えますと,日本の薬草だけであらゆる病気に対応するのは心許なく感じられます。病気という異常事態においては,他の地域のものでも,明らかな作用を有するものを用いて治療をすることを選択すべきと考えます。

 外国の食材や調理法も,私たちに喜びや楽しみを与えてくれますし,現代においてはもう欠かせない存在といえるでしょう。私はよく,旬の和食が健康にいいと申し上げてますが,それはあくまで基本です。基本となる食事で体調を整えつつ,時に外国の料理を楽しむ,そんな食生活が理想的な気がします。

 本来,身土不二は仏教用語で,「身」(今までの行為の結果)と「土」(身がよりどころにしている環境)は切り離せないという意味だそうです。食と健康の因果も切り離せません。

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