関節痛の漢方薬

 寒くなると関節痛が悪化するという方が多くいらっしゃいます。その場合,お風呂や温湿布などで痛みが和らぎます。温めることで血行も良くなり,曲げ伸ばしも楽になります。

 関節の痛みの原因を考えるとき,漢方には二つのキーワードがあります。『不通則痛』と『不栄則痛』です。

 漢方書によれば,体の中には「気」「血」「水」などが流れており,これらの流れが何らかの理由で停滞すると,張りやしこり,そして痛みなどの症状が現れます。停滞と痛みとの関連に焦点を当てた表現が『不通則痛』です。

 また加齢による筋肉や骨の衰え,あるいは軟骨のすり減りなどからも関節の痛みに発展します。そうした場合,体を構築する栄養源を補って衰えた状態を回復させる必要があります。衰えによる痛み,これが『不栄則痛』です。

 冒頭で触れた寒さによる痛みは,寒冷の刺激が関節部分の流れを阻害して生じる『不通則痛』と考えられますが,元々痛みが発生しやすい状態にあったことも推察できますので『不栄則痛』の面も否定できません。

 関節の痛みに対する漢方薬は,以上のことを考慮し,①寒さや湿気などの痛みを誘発する条件を駆除する生薬,②気・血・水などの流れを改善して痛みを和らげる生薬,③麻酔薬的な作用を有する生薬,④筋骨を丈夫にする生薬,⑤気力や体力を補う生薬などが用いられます。

 代表的な処方である独活寄生湯(どっかつきせいとう)は①~⑤をまんべんなく含んでいます。しかし状況により①や②に特化した物のほうが良いこともありますので,独活寄生湯だけで万全という事ではありません。また患部が熱を持って赤く腫れているような状況では,温める生薬で悪化してしまう事もあり,患部の熱を取り去る生薬が必要です。

 つる植物はしばしば薬草として用いられ,流れを改善し,痛み,しびれ,むくみなどに効果的なものがあります。例えばアケビやスイカズラのつる茎は,それぞれ木通(もくつう),忍冬(にんどう)という生薬として活用されます。

 有毒植物として有名なトリカブトの根は附子(ぶし),烏頭(うず)といった生薬になります。無毒化した附子は日本でも汎用される重要生薬の一つです。冷えと痛みを緩和する強力な生薬と言えます。さらに中国ではサソリやムカデ,ヘビなどの有毒動物が用いられます。毒性が強いので体力を考慮しつつ,できるだけ短期間の使用にとどめます。

写真:中国の生薬市場で売られているサソリ
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